日本の養蜂の歴史

近年、健康志向の高まりによるはちみつの需要増加や、養蜂技術の向上などによって、2013年には世界はちみつ生産量が1,678,455トンとなったのですが、日本のはちみつ生産量はわずか2,792トンと全体の0.2%と非常に少ない生産量となっています。

 

なぜ、日本ははちみつの生産量がこんなにも少ないのでしょうか。

今回は日本の養蜂に関する歴史と現在の養蜂の現状をご紹介します。


日本の養蜂の歴史

 

日本で初めてみつばちのことが史上に表れたのは、奈良時代に完成した六国史の1つ「日本書紀」であり、推古35年のくだりに「夏五月、蠅有り、聚集まれり、その凝り累なること十丈ばかり、虚に浮かびて以て信濃坂を越ゆ。鳴く音雷の如し。すなわち東のかた上野国に至りて散りぬ」と記されています。

どこにみつばちのことが書かれているのかと気になった方も多いと思いますが、この時代にはまだ「蜜蜂 (みつばち)」という言葉が存在しなかったため、「蠅の群れ」という言葉で表現されていたのだと言われています。

 

文献上で初めて「蜜蜂」という言葉が登場するのは「日本書紀」の皇極2年のくだりです。

ここには「百済の太子余豊、蜜蜂の房四枚をもって三輪山に放ち、養う。しかれどもついに蕃息 (うまわ)らず」とあり、なんと百済の王子であった余豊が海を渡って日本へとやってきて、奈良県にある三輪山にて養蜂を試みたが、失敗に終わってしまったことが記されているのです。

そして、現在ではこれが我が国における養蜂の歴史の始まりであるというのが通説となっています。

 

その後、しばらくは養蜂に関する記述は見られなくなるのですが、世上が安定を始めた江戸時代になると、貨幣経済の進展と換金できる生産品に対する関心が高まったことで、庶民たちのあいだでもはちみつが出回るようになり、養蜂技術の向上やみつばちの研究が積極的に行われるようになってゆきます。

 

寛政11年に刊行された「日本山海名産図会」には、「凡 (およそ)蜜を醸する所諸国皆有。中にも紀州熊野を第一とす」という記述と共に、軒先に箱や樽などを吊るして養蜂をする人々の姿が描かれています。

また、熊野古道に次ぐはちみつの産地として芸州尾州土州なども合わせて紹介されています。

 

一方、九州地方と朝鮮のあいだにある対馬では、もっと古い時代から養蜂が行われていたことが儒学者の陶山訥庵の著「津嶋紀畧乾」に記されています。


現代における日本の養蜂事情

明治時代になると、西洋みつばちや西洋式養蜂技術が移入されたことで日本の養蜂は大きな転換期を迎えることになります。

明治10年、明治政府は東京都内藤新宿にある勧農局試験場にて西洋みつばちの試験的飼育を始め、養蜂の効率化を図るため、可動枠式巣箱や人工巣礎、採蜜用の遠心分離器などを取り入れ、さらに産業近代化を図る一環としてラングストロス式巣箱と共にはちみつ生産能力に長けたイタリア種の西洋みつばちを導入してゆきました。

 

しかし、勧農局試験場では西洋みつばちの養蜂に関する良い成果が得られなかったため、八丈島より南方700kmほどのところにある小笠原諸島へと実験場を移し、一定の成果が得られたため西洋みつばちを用いた養蜂技術が小笠原諸島より全国各地へと広まっていったそうです。

 

その後、日本各地でみつばちが蜜源とする植物の花が咲く時期に合わせて養蜂地を転々とする転地養蜂家が表れるようになり、現在でもおよそ1000人近くの方々が、転地養蜂家として活躍されているそうです。

 

ところで、日本には多くの養蜂家が居るにも関わらず、なぜはちみつ生産量が全世界のはちみつ生産量の0.2%しか占めていないのでしょうか。

 

その理由は、

・都市部だけではなく、農山村でも土地の開発が進行していること

・菜種など蜜源となる農作物の栽培が減少していること

外来昆虫が住みついたことで、みつばちが蜜を十分に集めることができなくなってしまった

品種改良によって蜜や花粉の量が減らされた果樹や園芸品種が栽培されるようになった

などが原因とされています。

 

そのため、日本政府は平成24年に養蜂の環境が大きく変化したことを受け、蜂群の適正な管理と配置、養蜂の届け出義務対象者の拡大、蜜源植物の確保などを大幅に改正した養蜂振興法を平成25年1月1日より施行しています。

 


今回は日本における養蜂の歴史についてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。

私たちが普段何気なく食べているはちみつは、先人たちが様々な苦労や困難を乗り越えた結果、大量生産することが可能となったことを忘れてはいけません。

これからはちみつを食べるときは、ふと先人たちに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

きっといつものはちみつがちょっぴりおいしく感じるかもしれませんよ。

 

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